国際宇宙ステーション計画への参加継続を求める答申が出た。詳細をまだ見ていないが、新聞報道を見る限り、僕はこの提案に賛成だ。

ISSからの撤退は、サイエンスという側面よりも、国際社会における日本のプレゼンスを維持するためには必要であり、また文科省は継続に向けての強い意志を持っている。過日、有識者会議が開いたタスクフォース会合で「ISSが無くなって誰が困るんですか?」との問いに、文科省担当者が毅然と「文科省が困る」と断言された。「列強が無重力環境に有人実験室を持つ中、我が国がそれを有しない状況を作り出すことに反対だ」と、科学技術創造立国日本を支える官庁としての発言をされた。この決意表明こそが珠玉である。今でもISSの存在意義を科学的価値に求める意見にはあまり納得できない。しかしこの発言は『国際競争力としての科学力(ポテンシャル含む)』に関する発言だと理解した。まただからこそ、松井座長も「腑に落ちた」と、当日の記者会見で御発言されたのであろう。(もっともそれでISSをやる・やらないはもちろん別問題であるが。)
「これには価値がある。その価値を自分は信じる。だからそれを自分の責任でやりとげる。」この姿勢こそが、今の日本には必要だと僕は日々、思いを強くしている。

もちろん感情論的にこれを良しとしているわけではない。おそらく、有識者会議のメンバーでもISSの継続は意見が分かれているだろう。世間では私が反対派の急先鋒と言うことになっているようだが(笑)、実際の所は私は条件付き推進派である。(というか、現在の国際情勢の中では即時撤退は非現実的。)今回の新聞報道を見ると、この提言には、同じく有識者会議のメンバーでもあった山川さんの意見が色濃く反映されているように見える。また実はこの件は、私と山川さんの間でも、何度となく議論している。
我が国のISS政策は、現時点では砂上の楼閣だ。すなわち、行くための手段、帰るための手段を我が国は有さない。それを棚上げしたままこの計画を続ける事は非常に危険だ。本提言では、まずはHTVを発展させることで、無人の帰還システムの構築を謳っている。またコスト削減を狙いつつも、「お付き合い」に留まらないで必要なら更なる投資も躊躇するな、と提言している。本文にどれぐらい盛り込まれているか不明だが、我々の議論の中では「日本のモジュールを積極的に売る」(必ずしも金銭だけではない)事も上がっていたが、これがどの程度盛り込まれているのかが期待されるところだ。
重要なのは「やるなら本気でやれ、徹底的にやれ。」である。ISSからの撤退が不可避なのであれば、それは徹底的にやるべきだ。そして日本の強みとすべきだ。確かに現時点で「有人滞在技術」はまだ日本が強みと出来る分野のひとつである。そしてそこを延ばすなら、徹底的にやるべきだ。

しかし、である。同時にもう一つ考えないといけない。すなわち、日本の国家予算というパイは限られているのだ、ISSをやるのであれば、必然的に何かが削られなければならない。それはなんなのか?そこは十分に考えないといけない。あれもこれもそれも欲しい。それは子供の戯れ言だ。我々は自分の財布とよく向き合わないと生きていけない。

ISSをやるなら徹底的にやれ。2020年以降も必要なら日本独自で有人滞在技術を温存し、さらに発展させるべきである。ひょっとして2020年以降にISSが無くなっちゃった時の保険として、月探査に唾をつけるなどといったつまらない中途半端な事はやるべきではない。そもそもそんな提案は、真面目に月探査を考えてきた人達に対しても失礼だと思う。南極に無人月面基地を作って誰が嬉しいのか?誰が困るのか?誰か、「俺が困る」と宣言したか?誰も宣言していない。リスクテーカーの居ないプロジェクトが成功するわけはない。誰も本気じゃないプロジェクトに、未来はない。そんな未来に日本がつき合わされるなら、それは悲劇だ。

たまたま同じ日に準天頂衛星「みちびき」の打ち上げ延期の報が出たが、こちらに関しても先日書いたとおりである。やるなら徹底的にやる。やらないならやらない。そしてそれをやるなら、他との比較もきっちりやって取捨選択を行う。そんなビジョンがあまりにも長きにわたって欠け過ぎていた。これは宇宙分野だけではないけれども。

ISSは絶対に継続し、国際社会における日本の科学的なプレゼンスを維持する。そう断言した文科省の決意を、僕も心から応援したい。目的はISS上でのサイエンスではない。ISSが発揮する国際的なプレゼンスと、そしてその未来に見える日本の将来ビジョンだ。そこをこそ、描くべきである。

ISSを巡る動き

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