・学術成果の広報体制に関して
多くの研究者は確かに税金によって雇われていますが、個々の研究者もまた研究者の社会も、”広報”をすることが自分たちに使われている税金に対する対価だとは考えていないと思います。研究者にとっての成果とは、論文だけであるという認識の方が大きいのではないでしょうか?
このような研究者の社会通念?に照らし合わせて考えてみると、”学術成果を広報することが科学者の社会的責任である”と言われてもあまりぴんとこないのだと思います。また、仮にその意見に賛成だとしても、そういった広報活動が研究者の業績として還元される環境になく、むしろ本当の成果である論文発表に割くべき貴重な時間を自己顕示欲のために使っている、と思われてしまってマイナス評価を受けることが少なくありません。
今回のシンポジウムでは”トラウマがあるから私は広報に力を入れる”というご意見が多数在りました。しかしこれは反対に言うと、”トラウマが無いと広報をしようという気にならないような体制”に研究者が置かれているということを示しているのだと思います。この体制を打破する手段が”科学者の社会的責任”という曖昧模糊とした、それこそ”それじゃ喰っていけない”スローガンに頼らざるを得ないので在れば、理念倒れに終わるのではないか?と危惧します。
しかし、広報主体を研究者ではなく研究組織の広報機関であったり学会等の広報機関であるととらえ直すと、必ずしもこういった”食えない”スローガンには終わらなくなります。すなわち広報によってその分野の社会的意義が認められたならば、その分野に対する社会からの投資も増える可能性が十分にありますから、広報機関が広報をする事は、まさに”飯の種を稼ぐ”という観点からも重要になります。こう考えてみると、組織としては広報のモチベーションは十分にあり得ますが、しかし昨今の科学技術は細分化していますから、必ずしもその機関の広報担当であったとしても、研究者の研究内容を正しく広報する事が困難であったりしますし、また研究者が公開すべきと考える、また社会が公開すべきと考える広報内容と、組織としての利害を考えたときに公開すべき広報内容が一致するとは限りません。その場合、いわゆる”大本営発表”になってしまう可能性は捨てきれません。
そこでこれは私が昔からしている提案なのですが、研究者が自分の研究成果を広報することによる成果が、そのまま研究者の研究費に還元されるような仕組みを導入してはいかがでしょうか?運営主体は学会であったり公的機関であることが望ましいのですが、Internet上でそこに研究者が自分の研究成果と今後自分が行いたい研究内容を掲載できるようなwebサイトをもうけます。次が現段階では技術的に一番難しいのですが、それを閲覧した一般の人が、”この研究になら寄付して良いな”と思った場合、10円でも100円でも1000円でも、クリック一つで寄付できるようにします。いったん税金として集められたお金をクリック数に応じて再配分すると言う考え方もあり得ますが、この場合は組織票が動かないようにする必要も生じますし、また技術的な課題も大きくなるでしょう。あるいはこのようにして募金をした場合は同額の税金が免除される、と言うのも一つの方法かもしれません。このような手法によって献金が行われた場合、例えば5万円集まるなら研究者はちょっとやってみるかと思うでしょうし、100万円ならかなり真剣にやるでしょう。また、一般の人も自分のお金を投資すべき研究とは何かを考えるようになるし、まさに学術成果が一般市民と共有されていく方法につながると思います。
ただし必ずしも一般受けする研究テーマだけが科学的に重要なわけではありませんから、仮にこのような制度が導入できたとしても、従来の研究費配分方法も重要であることは言うまでもありません。

<シンポジウムの内容に関する私の意見/コメントなど>

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