新幹線なんかに乗ると読めるし、キオスクにも販売されている情報誌WEDGEであるが、この7月号16〜18ページに、鈴木一人先生が「測位システムこそ宇宙政策の急務」とう記事を投稿されている。是非御一読を。
有識者会議の提言書で、我々は測位に関して「国家として独自の測位システムを構築する意思がない場合は不要。他国の測位システムの補完システムは、ユーザからの強い要望がない限り不要。」と書いた。これを即、準天頂の廃止と読み解いた人も多いが、我々が言いたかったことはそういうことではない。記事中でもその経緯を鈴木先生が書かれているが、日本の準天頂は、「衛星の実利用」が必要な時代に続けられている、「R&Dの典型」である、というのが重要なポイントである。このような「R&D」衛星はさっさと辞めるべきで、その先の実利用を念頭に置かないのであれば無駄以外の何物でもない、というのが主旨だ。
しかし現実には、おそらく中心利用省庁と成る国交省は興味を持っていない。他から準天頂衛星分の予算が割り振られるならともかく、現在の予算枠のどこかを削ってまで実施する意思はない。その先に、日本の宇宙ビジネスが開かれるかも知れないが、それは国交省としては別に興味がないということだろう。でもまぁある意味、それは現状の官庁縦割り行政では仕方のない結論にも思える。
必要なのは、将来、世界の中で日本がどのような立ち位置にあるべきなのかに関するビジョンを作り、それを実現するために省庁横断的に施策を実施できる機能である。本来であればそれを担うのは、優秀な日本の官僚だと僕は心底思っている。しかし、省庁縦割りで配置された官僚が、そういったことを内部から提案することもなかなか難しい。官僚が自分の意思で現在の省庁の管掌業務の枠を逸脱して行動し始めることの危険性も充分に認識されるべきであり、そういう意味でが現在の状況は、分別ある行動とも言える。
官僚側にそこの意思判断を任せるのは非現実的であり、政治側が政治の責任として、それを実現するための方策を講じるべきである。具体的には政治任用の人材を官僚組織の中に配置し、実行権限を持たせる(すなわち予算編成権を持たせる)事が重要かと思う。政治任用の人材は、政権が変わるたびに、毎回、時の政権の審判を受けるべきである。そういう意味では非常に不安定な身分であり、現在の日本にそんな不安定な身分を受け入れる、それなりに優秀な人材が居るのか?というのが実は大きな問題であったりする。
常にそういった人材をプールできる社会構造までも考えないといけないのかもしれない。

準天頂衛星に関して

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準天頂衛星に関して” への2件のフィードバック

  1. >「実利用」は、国からお金を引き出すための方便
    長年続いてきた「宇宙開発は国費で」という慣行が、いろんな所で出ているのだと思います。
    >最初から「測位」だけを考えていたら、「準天頂軌道」以外の解もあった
    かどうかに関しては、議論が必要かと思います。もっともこれは「測位」だけではなく、「あくまでもアメリカのGPSからは離れない」という政治的なアピールも必要かもしれないので、そこもきちんと考えつつ、です。
    ベースの部分は同じ考えだと思いますが、「やるならきちんと宇宙で儲けてね」だとおもいます。<市場は海外から

  2. いつも読ませていただいております。
    準天頂衛星(QZS)に関しては、秋山さんの認識と私の認識が大きくずれており、素人の身ですが書き込みさせていただきました。間違いがあれは指摘ください。(長文失礼)
    1997.3 宇宙開発委員会で、「我が国における衛星測位技術開発への取り組み方針について」という文書がまとめられる。この時点では、あくまで衛星測位が目的。
    これを受けて民間企業有志が研究会を結成。そのレポートが2001.7に経団連から国に提出される。内容は「準天頂衛星3機を使用したシステム(QZSS)」で、目的も、測位以外に放送・通信が盛り込まれる。
    2002.6 経団連の提案を受け、総合科学技術会議が「QZSSの開発・整備を、『産官の連携のもとに』推進する」との方針を採択。この時の試算では、開発費500億円、事業費1200億円。この内、事業費800億円を民が持つ。
    2002.11 民間42社(最終的には59社まで増えた)の出資を受けて、QZSSの利用者開拓を目的とする、新衛星ビジネス株式会社(ASBC)設立。資本金1億円。幹事会社6社(カッコ内は出資比率)。三菱電機(17.1)、日立(16.9)、伊藤忠、NTスペース、三菱商事(各11.0)、トヨタ(10.0)。残り36社で2300万円なので、幹事以外はお付き合い。
    2002.12 総合科学技術会議が「QZSSの研究開発は妥当」と判断。この時の試算では、予算総額780億円(これは民の負担額のみか)。経済効果は12年間で1兆円。
    2006.2 民間の事業化判断において、民間独自での通信・放送事業の実施は困難であることが示された。この時点で、研究開発費を除く事業費は当初の1200億円(民800億・官400億)から1530億円に増大していたが、見込める収入は測位の200億円しかないので、残り1330億円を官の負担として欲しいと要望し(ついでにASBCへの融資の政府保証も要求)、却下される。
    *コストは当初の1.3倍、収入(利用者)は1/4。まるでどこかの高速道路みたいです。
    2006.3 方針転換。国の負担増により、1機目(みちびき)は国が上げる。放送・通信用Sバンドの機能は削除。2・3機目は国と民間の負担とし、1機目の結果を見て事業化を判断(事実上の断念)。
    2009.8 ASBC解散
    準天頂衛星のウリは、「都会のビル街や深い山の奥で、静止衛星が見えない所でも大丈夫」、です。ただ、放送・通信の観点から考えると、ビルの谷間でも携帯は通じるし、高層ビルの1階でもTVは見える。QZSの電波は地下街には届かないことを考えると、わざわざQZSを利用したいという一般ユーザーはいない。南アルプスの最深部では、QZSSは確かに有用だと思いますが、でもそんなところに住んでいる人、出かける人の数は微々たるもので、とてもペイしない。
    測位に関しては、QZSの電波を使うとGPSより精度がヒト桁上がるとのことですが、でも現状のカーナビの精度があれば通常の使用では十分で、これまたわざわざQZSを使おうとする人は少ない。
    結局「QZSSが採択されれば衛星が一度に3機も売れる。ウマー」という衛星メーカーの目論見から計画が立ち上がり、そしてつぶれた、と。ASBCの幹事会社に衛星メーカーは入っているのに、TV局や電話会社が入っていないこともみても、どこがQZSSへ力を入れていたか、良くわかります。
    これは個人的な想像ですが、おそらく衛星メーカーは、QZSSはペイしないことは分かっていたと思います。とにかく、衛星が売れて儲かればよい、と。ただ、今回は国の全額出資とならず、赤字が出ると我が身にも降りかかってくるので引き下がった。まあ、1機は売れたし。
    衛星のことは素人なんで良く分かりませんが、最初から「測位」だけを考えていたら、「準天頂軌道」以外の解もあったんじゃないかと思います。「みちびき」の重量は4t。GPS衛星が1.5-2tなので、これも最初から「測位」に特化していれば、もっと安く早くできたんじゃないか、とも。メーカーは儲からないでしょうが。
    QZSは実利用を考えていなかったわけではありません。むしろ、日本の宇宙開発プロジェクトとしては珍しく、「実利用」を旗印に立ち上がったプロジェクトです。ただ、その「実利用」は、国からお金を引き出すための方便でしたが。

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