タイトルを見て、「先日までと違うじゃないか」と思われるかも知れないがそれは短慮である。私は月探査も重要なミッションだと考えている。「月を辞めて小天体に」というのが私の主張ではないので、あえて今回はこのタイトルにしてみた。
まず問題点を整理しよう。今、この時点で、『サイエンス』という意味でどんな惑星探査をすべきかについては、それはもう14年も前に結論が出ている事は先日書いたとおりである。すなわち太陽系以前の状態も保持している可能性の高い小天体の探査、太陽系形成初期の状態を保持している月他の天体、そして日々進化し続ける『惑星圏』としての金星・火星・タイタン・その他の氷衛星。これらは生命が発見される可能性も高く、無機質の『惑星圏』が『生命圏』をも内包して進化している状態が調べられるかもしれない。
この観点に立つとき、着陸機およびローバ(自走式探査機)による協調ミッション、そしてサンプル採取と回収ミッションを月で実施する事は極めて重要である。これらのミッションをいつの時期に実施するかはまだ議論が必要だが、日本が必ず(そして世界的にも色あせない段階で)実施すべきだと私は思う。
一方、私は固体惑星の人間なので、これまで『探査』というときに『惑星探査』しか取り上げてこなかった。しかし日本には、たとえば「たいよう」にはじまり「ひのとり」「ようこう」「ひので」と続く長い長い太陽観測衛星の歴史がある。
また他にも「はくちょう」「てんま」「ぎんが」「あすか」「すざく」等のX線天文衛星、またその他にも赤外線観測衛星やプラズマ・高層大気の観測等で多くの観測衛星・探査機が活躍してきている。これらはいずれも世界でも最先端の科学を切り開いている観測衛星・探査機である。
実は今、「はやぶさ」の大成功の影で、こういった様々な種類の観測衛星・探査機の計画継続が危ぶまれるのではないか?と危惧されている。なぜなら、これらはすべて一括して「科学探査衛星」と分類され、その予算が非常に少ないからだ。

科学とは雰囲気で流されて決められるような物であってはならないと、常々思っている。しかし例えば今回のような『熱狂的な』成功を示されてしまう、そしてそのあおりを食って、サイエンス的な意義は高いが『地味』な研究予算が削減されてしまう。そのようなことは往々にして起こる。しかしそうであってはならないと、我々一人一人がきちんと理解し、正しい議論が行われるように見守ること。応援すること。それが「科学技術創造立国」を支える日本の国民であり、人材だと僕は思う。良く「政治がわかっていない」等と言われるけれども、少なくとも私が親交のある議員の方々は、節度有る態度で「科学コミュニティーの結論」を待ち、それに従われていると感じる。もっとも欲を言えば、「科学コミュニティーが示す未来」を実現するために、全体政策の中で「科学」の重み付けを高めて欲しいと思うけどね :-p
今重要なのは、「月だ小天体だと惑星分野の中で議論が起こっているようだけれども、太陽・天文・超高層のミッション意義とも比較した検討をしようよ」という議論がサイエンス全体で行われることだと思う。またその結果として、これだけ様々な成果を上げているサイエンスに対して「我が国の長期政策・科学技術創造立国を実現するために必要な予算」がいくらなのか、それをきちんと要求していくべきだと思う。既に決まった予算全体枠をベースとしてその中でコップの中の嵐を起こすのではなく、必要ならそれを広げていく方策をこそ、考えるべきだと思う。

そこで最後に繰り返しになるけれども、「現時点で2020年までに2400億円といった規模の月計画を決定するのはあまりに時期尚早」だと僕はもう一度主張したい。
関係者各位の御理解と御尽力を、心より期待します。

月探査は実施されるべきである

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月探査は実施されるべきである” への1件のフィードバック

  1. 連日の更新、お疲れ様です。確かに、大いに学び論理的な思考を持ち判断することが大事かなと思います。でないと某バルカン星人に、その月計画は非論理的ですと、言われてしまします。失礼しました、後進の育成にがんばってください。

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