もはや呆れたような状況になりつつあります。月探査懇談会の提案に関するパブコメ、今のタイミングで月をやる事に関する疑義がかなり出ていたようですが、「反対意見は丸め込んででも、2020年までに月探査に2400億円を付ける」方向に強引に乗り切る方針が本日中に決定しそうです。
何度も繰り返しますが、僕は別に月探査そのものに反対している訳じゃ無い。月の着陸探査はやるべきでしょう。それはいつかのタイミングでね。しかし他の物を全てかなぐり捨てて今のタイミングでやる話しでも無いし、ましてや2020年まで引っ張って2400億円という巨費を投じて、月南極に無人月面基地とか今、決めちゃうことの意味が全くわからない。
幸い、このblogにはそれこそJAXAからも内閣府からも文科省からも毎日、幾度となくアクセスを戴いています。であるなら、是非、読んでください。考えてください。今一度、胸に手を当ててよく考えてみてください。日本の宇宙開発は、日本の科学は、日本の国際プレゼンスは、日本の未来は、あなた方の舵取りによって為されているのではないですか?本当に、誇りを持って、今、貴方は最善の決断をしていますか?今、あなた方がする決断が、まさに日本の子ども達の将来を決めてるんですよ?それはホントに日本の為の決断ですか?組織維持のための決断ではありませんか?そのことに今一度、想いを馳せて戴きたいと心から思います。

日本がやるべき探査は何か?それはもう14年も前ですが、惑星科学のコミュニティーが結論付けをしていま
す。
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2.4.2 探査ターゲット案
どのような探査を行うかについては,§2.2 の原則に基づいて広く議論を行う必要がある.本委員会ではこの原則を考慮し,
• 太陽系の起源とその初期環境の解明,
• 惑星の形成過程と形成後の進化の解明
が,惑星科学において本質的問題と考え,今後のわが国において強化・推進すべき月惑星探査項目として,次の項目を提案する:
A. 月惑星内部構造探査(ターゲット:月,火星,水星)
B. 太陽系小天体(小惑星,彗星,衛星)探査
C. 惑星大気・磁気圏探査(木星,金星,水星)
(A) は現在進行中の LUNAR–A で開発されたペネトレータや今後の改良型を用いた月惑星の内部構造探査を目的とする.これまでのアメリカや旧ソ連を中心として広範な月惑星探査が行われてきた.しかしそれらはすべて惑星表層や大気・磁気圏探査に限られている.ペネトレータは内部構造を調べることのできる現時点における唯一の測定機器であり,国際的にも高く評価されている独創的方法である.
これを用いて
1) LUNAR–A のネットワークをより拡張した月震計・熱流量計ネットワーク観測
2) 火星や水星の内部構造探査
が考えられる.(1)は§2.3.3 で述べた H–II の2号機ミッションとすることが現実的である.
(B) は太陽系の初期状態を保った天体である小惑星と彗星の探査を目的とする.In situにおける測定だけでなく,できるかぎりサンプルの持ち帰りと地上の実験室における分析まで含めたい.小天体は太陽系の初期状態に関する情報を保持した化石天体であるものの,太陽系の起源の研究に直接かつ広く結びつく本格的な探査はまだなされていない.このためにはサンプルの持ち帰りと地上の実験室における分析がきわめて重要である.これ
によって,宇宙物質科学の研究に飛躍的進歩がもたらされることが期待される.また従来の実験室物質科学の研究者も探査に参加する道を開くことができる.小惑星探査については,現在,宇宙科学研究所を核に小惑星サンプルリターン(MUSES–C)計画が進行中であり,種々の技術開発が行われつつある.
MUSES–C 以降の小天体探査は,MUSES–C によって解明された結果とそこから新たに生じる課題に即応した探査が行われることが理想的である.しかし探査の準備に多くの時間を要するため,同時に,MUSES–C 以後を射程においた計画を前もって検討しておかねばならない.これらの要求を同時に満たすためには,現時点においてできるだけ柔軟な計画を検討しておく必要がある.

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どこにも「月南極に無人基地を」とは書かれていません。サイエンスの観点からは、「月でやるべきは内部探査」と明記されています。これがサイエンスの結論です。また同時に「小天体は太陽系の初期状態に関する情報を保持した化石天体」であるとも明言し、そのサンプルを持ち帰り調べることが重要だと断言されてます。「はやぶさ」で技術を培い、「太陽系が出来る前の状態」を保持した小天体探査を行う「はやぶさ2」が重要だとちゃんと書かれています。「はやぶさ2はサイエンスの禊ぎを受けていない」と言うのは誤りです。この計画は、もう十数年来、我が国の惑星科学コミュニティーが掲げてきたサイエンスの主目的にきっちりと合致しているのです。

明日の日本を作るのは、心に錦の御旗を持った、一人一人の信念だと、私は信じて止みません。

心に翻るのは錦の御旗?

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心に翻るのは錦の御旗?” への9件のフィードバック

  1. 私も月探査懇談会の提案に反対します。
    秋山先生のメッセージを読んでいる、JAXA、内閣府、文科省の皆さん。
    私たちは現在「はやぶさ2」のための署名活動をしています。それは
    「C型小惑星探査」計画を応援するものです。月探査ではありません。
    月探査も必要だとは思います。でも、今一度考え直してください。
    なぜ「はやぶさ」が「歓呼の声」をもって国民だけでなく「世界の人々」
    から迎えられたかを。「世界初」を成し遂げた「はやぶさ」とプロジェクト
    に携わった人々に「歓呼の声」を送ったのです。それを見誤らないでくだ
    さい。事は「未来の子供達」に残す事なのですから。

  2. 科学的観点ではなく外交的、軍事的観点からの思惑があるのかも?月資源へのアクセス能力保持を外国との交渉材料にするとか。

  3. (ツッコミ)「心に錦の御旗」とはどこの老人かと・・・
    (コメント)意味のないことをやったのではステータス誇示になりません。バカにされるだけです。まして、衛星破壊実験などをやれば非難を浴びます。目的を明確にして実行できたら始めて国際社会で名誉ある地位を占めることができるのです。

  4. オバマ大統領も中止を発表した、月面基地建設計画を日本がやるのですか? その他の宇宙開発計画の予算配分がなされずに、この計画の予算のみが決定されるのならば猛反対です。大阪府民としては、安易な箱物行政には強いアレルギー反応があります。

  5. こういう真摯で心のこもった文章に触れると、心が熱くなります。
    世の中は一般に既得権が強く、組織維持のための決断が多く見受けられます。
    得てして声の大きいヤツが勝ちます。
    なにか行動を起こしたくなりますが、具体的になにをやったらいいかわかりません。
    とりあえずここに、月探査懇談会の提案に反対する旨、表明します。

  6. この記事を見て愕然としました。
    もしこの予算案が強行され、その為に他の宇宙政策が割を食うのであれば
    日本の宇宙開発終了のお知らせ
    に他ならないと思うのです。先の成功が、その直後の全く的外れなとても
    くだらない決定によって、還ってダメージが大きくなってしまう・・・
    最悪の結果ではないでしょうか。何のためにパブコメ集めたのか理解できません。
    声を上げても無視されるのであれば・・・その後の懸念された体たらくを
    見せ付けられるのであれば・・・絶望しか感じられません。

  7. 秋山先生に同意。
    はやぶさははやぶさ2となるべきで月探査に使われるべきではないと思います。

  8. 何のために月?
    コロニー?未来の宇宙間旅行基地?開発競争?
    それよりも宇宙飛行技術の開発の方が先でしょう。
    遠くの天体探査の方が先でしょう。
    人類の夢は、月よりも遠くを観ているのですから。

  9. 「MUSES–C 以後を射程においた計画」はハヤブサMKⅡのことで、「はやぶさ2」が別計画/別物であることを知らないの?
    だから「はやぶさ2はサイエンスの禊ぎを受けていない」と言われているんですよ。

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