さて、僕が能代でバタバタしている間に、韓国の新設射場から韓国の独自?ロケットが打ち上げられた。結果はフェアリングが分離せず、衛星が軌道に乗らなかったわけだが、このロケットの打上、というよりこの射場の設置には大きな問題が存在する。
先に北朝鮮が、この場合はミサイルでも人工衛星でもどっちも良いのだが、この発射実験を行ったときの騒動を覚えている方も多いだろう。何故あんなに大騒ぎになったかというと、「万が一、我が国に落下してきた場合の被害が甚大」という理由からだ。上昇途中のロケットはものすごい爆発力を絶妙のタイミングで制御して飛んでいるので、一旦このバランスが崩れてしまうと大変だ。その膨大なエネルギーが地上で解放されると、とても大変なことになる。中国では街が一つ壊滅した程だ。
そのため、国際的には「上昇途中のロケットが他国領土を横切らない」事が常識となっている。少なくとも、当該国と十分な話し合いがされるのが重要である。その点、我が国は非常に恵まれた地理的環境を持つ。東には太平洋が広がっており、上昇途中のロケットは他国領土を横切らないで済む。(ロケットは地球の自転速度も利用してエネルギーを稼ぐため、通常は東に向けて打ち上げられる)イスラエルは東に敵対国が広がるため、わざわざこの東打ちの利点を捨て、西向きに打ち上げるなどの苦労もしている。中国はどうか?中国は当初、射点を国土の西に設定することで、上昇途中のロケットが他国の領土を横切らない配慮をしていた。近年では東側の沿海部(海南島)に射点を移そうとしている。東には台湾があるが、まぁ中国のロジックでは「自国領土上空しか飛ばない」ということで一応はokである。それでは韓国・北朝鮮はどうなのか?
残念なことに、朝鮮半島はどこから打ち上げを行っても、上昇途中のロケットが日本上空を横切ることになってしまう。そのため、少なくとも打上に際しては、日本が納得するだけの保証なり技術情報なりを流して、十二分に話し合いを行う事が本来であれば求められる。しかし2007年段階で記事に取り上げられているが、射点を作る段階でも十分な話し合いは行われてこなかった。もちろん、その後にこの問題が話し合われた可能性はあるが、しかし、私の知る限り、その後もこの点で我が国と韓国とが十分な話し合いを行った形跡はない。また仮に話し合いが行われたとしても、何故北朝鮮はダメで韓国はokなのか、その根拠が公開されたことはない。
すなわちどんな事態になっているかと言えば、「ホントは韓国のロケットを黙って打ち上げさせてはいけなかったのに、打ち上げられてしまっている」というのが現状だ。ちなみに韓国のロケット打上は、人口密集地である日本の本州上空を横切らないように、衛星に極軌道をとらせる南宝庫に打ち上げられているが、しかしこれでも南西諸島に落下する可能性は十二分に考えられた。この点に関して、我が国は今からでも韓国と、十分な話し合いを行うべきであると私は思う

一方で、じゃ、話し合って解決する問題なのか?といえば、、、、実はこの問題は解決しないと思われる。今回のロケット打上は失敗したが、しかし韓国はロケット開発を諦めることはないだろう。その気持は同じ宇宙を目指す一人の人間として、良く理解できる。しかし地理的条件から考えると、韓国のロケット打上が非常に迷惑な事は否めない。この問題の解決には、日韓両国が韓国のロケット打上を両国間の外交問題としてきちんと認識し、外交課題に挙げ、お互いが納得するコンセンサスを構築することが必要不可欠である。
それでは両国が納得できるコンセンサスとは何か?これは、日韓が協力し、アジア共通射場を日本の東端、あるいは太平洋上に建築することしかないと僕は思う。しかしこれが実現するかどうかは、非常に難しい。両国にはこれを議論するだけの基盤がまだ整備されていないからだ。

今回の射場問題は、実は韓国が射場建設を行おうとした2006年-2007年前後から、関係者は良くわかっていたと思う。僕が気がついていたぐらいだから、当然、輸送系の人たちもみんなわかっていたはずだ。しかしこの問題に関して深い議論が行われることは無かった。何故か?まぁ簡単に言えば、「誰も火中の栗を拾いに行かなかった」と言う事なのかな?もっと言うと、「正面から言うと喧嘩になりそうだし、もし韓国の宇宙業界に知り合い居たらそこからやんわり議論も出来たけど、知り合いが居なかった」ということみたいだ。
もちろん、何処の怠慢かと言われれば・・・とか戦犯捜しをしても仕方ない(まぁどこが悪いかは明らかなんだけどね)ので、今後どうするのか?が重要な問題だと思う。もしも、日本の宇宙開発に係わる人たちが韓国で宇宙開発に係わる人たちと太いパイプを持っていたら、おそらくこの問題はもっと早期に解決していただろう。そしてこのパイプは、今もなお、充分に構築されているとは言い難い。大学人として、我々がやるべき事はこのパイプの構築ではないか?と僕は考えている。
今年は参加成らなかったが、昨年の能代宇宙イベントには韓国の学生もロケットの打上で参加した。残念ながら技術的なトラブルにより、彼等のロケットが日本の空を飛ぶことは無かった。しかし1週間近くにわたって、秋田大と韓国のロケットチームは寝食を共にし、よく話し、よく飲んだ。韓国の学生が帰った後で秋田の学生が僕に言った一言を今でもよく覚えている。「先生、あいつら、普通でしたよ」
そう、まさにこの感覚が重要なのだ。自分達と同じように宇宙にあこがれて、ロケット作りに苦労し、泣き、笑い、喜ぶ、同じ人間であるとの認識。当たり前だけど、同じ時間・同じ空間・同じ気持ちを共有でき、お互いが普通であると思えたこと。こういった記憶で結ばれた人間が両国で成長した時に、イコールパートナーとして、きちんとこういった問題に対処できる人間関係を構築できると僕は思う。

もちろん韓国の射場問題は今すぐ外交的な議論の俎上に載せるべきではあるとおもうが、その一方で、我々は宇宙教育を通して、こういった人間関係の熟成に努めるべきである。もちろんこれは韓国に限ったことではない。中国然り、インドネシア然り、マレーシア然り、タイ・ベトナム・カンボジア・シンガポール・ミャンマー。日本の宇宙教育のレベルは世界でもトップクラスであり、じつは既に十数カ国から、是非、教育プログラムに参加したいとの問い合わせも来ている。この機会を無駄にすることなく、今後の日本の、アジアの、世界の宇宙開発の礎と成る人材と人間関係を構築することが、今、まさに必要である。

その一歩として今、僕が考えているのは、高校世向けの缶サットの世界大会である。日本では今年、2回目の缶サット甲子園が開催された。今年は特にYACの宇宙教育テレビでも生放送が行われ(現在はビデオアーカイブを視聴可能)、イベントの様子を広く全国に知って貰うことが出来た。この大会はサントリーANA両社による多大なる御支援で実現しているが、残念なことに現状ではまだ資金的な問題を抱えている。そのため、初年度は8校が、今年は12校の参加に留まっている。しかし今秋、申請している予算がちゃんと通れば、より大きな大会にしていきたいと考えている。(民主党の補正予算ストップって話しが怖いんですが(^_^;。あと、予算に落ちちゃうこともあり得ます …orz)
具体的な流れとしては、

  • 今年の冬までに来年度の競技コンフィギュレーションを確定。
  • 2月頃から開催の案内を全国の高校に通知。
  • 8月に全国3カ所(能代・和歌山・九州?)で地区予選。各地区上位3チームは全国大会への出場権を得る。
  • 10月or11月に、全国9チームで能代or和歌山or九州で、全国大会。
  • 翌年2月or3月に、ハワイ島で世界大会
  • を考えている。(ハワイ島で世界大会は予算の裏付けは・・・・まだ無いです(^_^;)
    この世界大会には、アジア各国の高校生も是非呼びたいと考えている。そこで現在、和歌山大クリエの映像チームが、缶サット甲子園のプロモーションビデオを、日本語版・英語版・韓国語版で作成中である。これを今年の冬ぐらいから、各国の宇宙開発部局にばらまきたいと思っていて、これに興味を持った国にはハワイでの世界大会への招待を行いたい。

    我々はこのような教育プログラムを、この高校生向けの缶サット意外にもいくつも用意している。今後10年-20年後、こういった思い出を共有した人間達が進める世界の宇宙開発がどのような方向性に進むのか。壮大な実験ではあるが、非常に楽しみである。

    ・韓国ロケット射場と宇宙教育

    投稿ナビゲーション


    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です