。また同日、宇宙開発戦略本部の下に設置された「月探査に関する懇談会」が開催され、報告書がまとめられている。この二つは全く別個の物であるが、同一の日の開催だったため一般には混同されて捉えられているだろう。流れとしては、月探査懇談会が昨日まとめた報告書が宇宙開発戦略本部会合に上げられて承認されるという流れになる。しかし今回の本部会合の時間が10分であることからもわかるように、本部会合の段階で提案された原案に修正を加える等はほとんど不可能である。
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宇宙開発戦略本部会合が開催された。また同日、宇宙開発戦略本部の下に設置された「月探査に関する懇談会」が開催され、報告書がまとめられている。この二つは全く別個の物であるが、同一の日の開催だったため一般には混同されて捉えられているだろう。流れとしては、月探査懇談会が昨日まとめた報告書が宇宙開発戦略本部会合に上げられて承認されるという流れになる。しかし今回の本部会合の時間が10分であることからもわかるように、本部会合の段階で提案された原案に修正を加える等はほとんど不可能である。
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ちなみに参考までに解説すると、我々も参加した宇宙開発に関する有識者会議の格は、月探査懇談会よりも低い。なぜなら我々は前原宇宙担当大臣に提言書を出すが、月探査懇談会は総理に提言書を出す立場だからである。

まぁそんなことはさておき。この二つの会合に関して、これは広く状況を理解していただいて、議論を深めるべきテーマがあるので今回はそれについて書く。月探査に関して、である。

そもそもの日本の月探査の歴史を見てみよう。我が国は月と地球を利用したスイングバイ技術の獲得のために、「ひてん」を上げている。これは純粋に工学ミッションであるが、「ひてん」は様々な画像も撮影している。特に、最後に月に激突する直前に取った写真には、当時の方々の心意気が感じられて胸が熱くなったものだ。
その後、理学探査ミッションとして「ルナA」が企画されるが、これは月に突き刺す月振計(ペネトレータ)の開発が困難を極め、1997年打上予定だったものが2007年までずるずると延長され、最後には衛星本体の耐久寿命が過ぎてしまい計画は廃止になる。
そして最近の「かぐや」探査機。これはハイビジョンカメラをはじめとする様々な搭載機器により、月全体に関する均一かつ総合的な科学観測をしたことが大きな成果である。これにより現時点で、我が国は月に関するもっとも「質の高い」データを保有している。
そして「かぐや」に続く計画として、じつは「かぐや」のメンバーはもう10年も前から、SELENE-2だとかSELENE-Bといった探査計画を提案してきた。この計画は月に着陸機を送り、ローバーにより地質ならぬ『月質』探査を実施しよう、という計画である。僕も最初からこのメンバーに加わっていて、月探査を実現するために頑張ってきた。しかしこれが全然通らない。何度も何度も蹴られ続けた。
その流れが大きく変わったのが、ブッシュの新宇宙プランの発表である。ここで重要なのは、ブッシュが「月に行く」と言ったことではない。「国際宇宙ステーションを2015年に破棄する」と言ったことだ。ステーションが破棄されるとなると、我が国が培ってきた有人の宇宙滞在技術はどうするのか?という問題になる。しかし幸い、ブッシュも「次の国際共同有人ミッションは月だ」と言っている。だから日本も月をやるべし、と唱えられるようになった。そのため、宇宙基本計画(最後の49ページ目参照)では、月探査は「宇宙科学プログラム」ではなく「有人宇宙活動プログラム」に分類されている。すなわち、「宇宙基本計画」で月を推したメインプレーヤーは「かぐや」チームではなく、「きぼう」チームであることは明々白々である。
このメインプレーヤーは、それまで私も参加していた「かぐや」チームでは出来なかったことを次々と実現した。一つには宇宙基本計画の中で月を特記させたこと。二つには、「月探査懇談会」を設置させたこと。これは科学や技術上の進歩ではないが、国内政治的には非常に大きな意味を持つ。
ところがアメリカがオバマ大統領になり、情勢がやや変わってきた。重要ポイントは「国際宇宙ステーションの延長運用」である。日本がどのような形で延長計画に参加するかはまだ明かではないが、何らかの形でつき合うというのが現実解(これに関してはまたの機会で述べる事にしたい)だろうと僕は思っている。また「きぼう」チームは、日本の有人宇宙滞在技術を存続させ、さらに発展させるために強くその存続を希望するだろう。すなわち、この段階で月を推進していたメインプレーヤーは居なくなった、あるいは「かぐや」チームに戻ってきた、というのが僕の認識だ。
サイエンスの立場から見て、「月」はもちろん重要な探査対象の一つである。しかし他の科学探査に比べてどうなのか?というのはまだきちんと議論されていない。この点は「月探査懇談会」と「有識社会議」の合同会議でも、懇談会側のメンバーが次のように明言している。「我々は月探査をやるならどのような探査が重要かと聞かれたのでそれに答えたが、他の科学探査に比べて月探査が重要かどうかは聞かれたこともないし答えたこともない」。このことはこの会合後に、泉政務官が『懇談会はあくまで月探査の懇談会をするようにと課題を設定されて議論してきた。月がいいのか金星がいいのか木星がいいのかというのは懇談会の中での議論としてはありえない』と述べていることからも明らかだ。すなわち、今現在、「月は他の科学探査に先んじてやるべきである」と述べている人は誰もいないのだ。いや、居たら名乗り出て欲しい。そして「自分の責任で、月の重要性を主張したい」と述べて欲しい。僕の知る限り、それを主張する可能性があるのは前述の、重力天体への着陸ミッションをやってみたい工学系の人と、月の科学探査をやってみたい固体惑星系の人だけだと思う。前者はともかく後者は「じゃぁ月のような分化天体と、未分化の小天体のどっちかしか出来ない(予算的に)としたどうですか?」と議論をさせてみたら、これは必ずしも月には軍配は上がらないと思う。
そしてもう一つの重要ポイントは、中国・インドは有人を視野に入れた月基地を考えている点である。日本は無人の月探査基地と言ってるが、これは有人月基地の前にどれだけのアピール力があるのか、良く考えてみたのか?という点である。

科学探査という点から見てもまだ議論不足であり、外交的にも有人の中印に対してパンチ不足。しかも推進母体が良くわからない。なのに何故、今回、月をやることが日本の国是のようになっているのか?それが僕には全然わからない。まさに「月の亡霊」と戦っているような感じだ。一つ、あり得るとしたら、それは宇宙基本計画にも「特記」され、「月探査懇談会」まで組織されてしまった、政治的な実績の積み上げからもはや逃れられなくなっている、ということなんだろうか?

我が国は、もはや何でもかんでもやれるような財力はない。宇宙開発も、科学探査も、厳選しなければならない時代に来ている。その中で、やりたい人もやりたいことも明確にならず、ビジョンも責任者も曖昧なまま、ただこれまでの積み上げの上に月探査が国是となるとしたら、これは悲劇である。広く深い議論が起こることを、切に希望する。その議論の中で、「僕がやりたいからやります」という人が出てきて、他の科学探査や工学ミッションときちんと比較して、「月探査は国是である」との結論が得られないなら、それは辞めるべきだと思う。

みなさんはどのようにお考えになりますか?

・月の亡霊昨日早朝、8時からわずか10分間だが、新政権になってから一度も開かれていなかった宇宙開発戦略本部会合が開催された。また同日、宇宙開発戦略本部の下に設置された「月探査に関する懇談会」が開催され、報告書がまとめられている。この二つは全く別個の物であるが、同一の日の開催だったため一般には混同されて捉えられているだろう。流れとしては、月探査懇談会が昨日まとめた報告書が宇宙開発戦略本部会合に上げられて承認されるという流れになる。しかし今回の本部会合の時間が10分であることからもわかるように、本部会合の段階で提案された原案に修正を加える等はほとんど不可能である。

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