前回の「その2」では、「国内産業の保護・国際競争力の育成」のための手段として、一つの提案を書いた。しかしこの実現に向けては様々な問題があることも併記した。引き続き、即効的ではないが、今後の日本の宇宙開発産業を育成するためのアイデアを「未来図を大きく変えうる新しい宇宙産業の育成」として、2〜3回に分けて提案する。

現在の宇宙産業の問題点は、寡占化にある。これは国際競争力を付けるために企業規模を大きくする必要があったから仕方がない側面もあるが、一方で国内産業を育成するために内需拡大策を採っても、それによって企業間競争が起こり技術・価格競争が起きるのではなく、既存企業だけが競争力を向上することなく生き残ってしまう危険性を高めている。
それではこの問題を解決するにはどのような手法があるのか?そこで我々は、この課題における一つ目の政策として、「新規企業の参入促進・挑戦的な技術開発」を提案する。主旨は以下である。

  • 高性能化・効率化のために、近年ではますます衛星は大型化し、必要とされるコスト・期間が膨大となりつつある。しかし大型衛星では失敗による損失額も膨らむため、新規参入を目指す企業に取ってはハードルが高すぎ、また既存の企業でも保守的な設計が多く採用されるようになる弊害も生まれている。
  • 一方で、衛星をより小型化し、リスクを小さくした上で最先端の技術に挑戦する超小型衛星の数も増えてきており、この市場では新規参入企業も多く見られる。このように衛星開発は大きく2つの方向に分化しつつある。
  • 従来の大型衛星開発体制に加え、小型衛星・小型ロケットの開発による新規企業参入の促進・挑戦的な技術開発の推進を実施するため、これまでこの分野で実績のある活動を国としても支援する。
  • 現在、経産省などが精力的に「空中発射による小型衛星の打上手段の確保と小型衛星開発」を進めている。これは200kg〜500kg程度の衛星を想定していると思われるが、ここで言う超小型衛星はさらに小さい、50kg程度以下の衛星を想定している。(今回の提案は経産省の小型衛星関連の開発を否定するものではなく、補完するものである。)
    20kg以下の超小型衛星分野に於いては、2003年の東工大・東大による打上に始まり、日本は世界でも最先端を走っている。既に昨年までに7機の衛星が打ち上げられており、今年もまた新たに5機が先日、打ち上げられたばかりである。またいわゆる「小型化」は日本のお家芸であり、アメリカ人が5個詰め込むところに日本人は8個積み込めるなど、日本人の好きで特異な世界であり、この分野は世界と勝負できる分野と言えるだろう。また金額・時間的にも1機あたり一億円以下・二年での調達が可能であり、宇宙で何かをやろうと考えている大学・中小企業が手を出せる世界である。多くの大学・企業参加が実現すれば、それだけ多くの手による技術開発・試行錯誤を実施することが出来る。具体的に、超小型衛星の効用としては以下が考えられる。

  • 新しい衛星技術の考案・発掘・試行錯誤の場(中・大型衛星にもつながる技術の芽出し)を提供できる
  • 「旬」の技術の早期軌道上実験・実証のテストベンチ(普通なら5年待つ必要)として利用できる
  • 小さいスケールの宇宙科学、無重量実験、ビジネス試行、環境モニター、教育、エンタメ等の実践により、本格的な投資をする最初の「試し」段階としての利用が可能
  • 宇宙開発・利用に貢献できる人材の育成(信頼性獲得、もの作り、失敗経験、プロマネ能力)を実践できる
  • 1億円以下、2年での調達により、新しい利用法の開拓、宇宙で何かをやろうという人を増やすことが出来る
  • 複数衛星による編隊飛行、コンステレーションなどが容易。干渉計測、ステレオ視等、超小型衛星の特徴を活かした特色有る運用が可能
  • 宇宙に参入したい中小企業の最初の鍛錬の場(大学と連携によりミッションをする中で)として利用できる
  • 例えるならば、JAXAが実施していることはF1であり、大学や中小企業が実施しているこれら小型衛星は、大衆車である。JAXAが最先端を走り、ピークを形成し、大学・中小企業はそのすそ野をがっちりと固める。これが足腰の強い宇宙産業を育成する為に必要となる、長期的視点に立った政策であると我々は考える。また今回は前回と違い、UNISECで研究を主体に実施されている先生方という実行部隊の顔も見えてくる。おそらく年間二億円程度の投資で、かなり大きなリターンを数年以内にもたらすことが可能である。
    というわけでこの項、次回に続く。

    ・日本の宇宙開発は何処に向かうべきか? その3

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    ・日本の宇宙開発は何処に向かうべきか? その3” への1件のフィードバック

    1. 先日小型衛星関連で英国サリー大学の紹介をNHKでやってました。番組を見ていてアフターサービスとか衛星管制業務を引き受けるなど「打ち上げたあとのサービス」を充実させることも必要と思います。あと打ち上げの容易さを確保すべきとも考えますが、電源部とかユニバーサルジョイント?など共通化すべき基準、規格の作成まで行わないといけないとも考えています。

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