僕のような宇宙好きがこの問題を考えるとき、最初から「宇宙ありき」の議論になりがちです。先日もとあるロボット関係の人に、「ロボットは国から毎年100億円しか貰っていないが、産業ロボットの市場は世界でも日本がトップクラスである。なのに何故、宇宙なんて産業にもならない分野に、2500億円もの国費が毎年注ぎ込まれているのか?」と聞かれたことがあります。これはまぁロボットは産業化に成功しているからさ、というのが理由とも言えなくはないのですが、しかし宇宙にそれだけの投資価値があるのかどうかは、確かに考えるべき問題ではあります。

flow_stock

これは我が国のここ50年弱のGDP(国民総生産 flow)の成長率と1980年以降の国富(stock)の変化を示したグラフです。経済の学生なら知っていることですが、GDPというのは、つまりは水道の蛇口から流れ込んでくる水の量です。一年間にどれだけの資産を作り出したか?です。これに対して、国民総支出というものがあり、産み出された資産は、その年の間にも使われる部分があります。しかし日本は長年、GDPが右肩上がりに成長する時代が続いたので、「あまった資産」(国富 stock)がどんどんと増えていったのです。しかしバブルが崩壊した1990年以降、負債(いわゆる借金)としての資産は増えていきますが、実際のあまった資産(正味資産ということ)は減少を続けています。これは自分の家の家計を考えてみて下さい。収入が伸びるに従い段々贅沢になり、支出も伸びていきます。でも伸び率は収入の方が多いので、お金は貯まってくる。ところが収入が伸び悩んできても、贅沢癖はなかなか抜けず、貯金はどんどん減っていく。そしてついには貯金を食いつぶし出す。またお金を借りて借金で生活を廻すようになる。そういうことです。これが現代の日本です。しかもその状態がもう20年近く続いているわけです。
国富が少なくGDPが順調に増えている頃、ほとんどの人々は真面目に生産活動に勤しんでいました。しかし国富が増えてくるにつれ、「国富をかすめ取る」ーすなわち土地やお金を転がすーことで巨利を得る人達が増えてきました。資産の規模がGDPの規模をはるかに上回っている(2008年段階で日本のGDPは500〜550兆円程度。資産は負債も入れて8000〜9000兆円規模)のだから、そりゃそっちの方が流れるお金・かすめ取れるお金は多いわけです。しかし日本のGDPの減少に伴い、足りない部分を借金(負債)で賄ってはいるけれども、段々と日本の経済は弱ってきているのが現状です。我々は「昨日の延長線上に今日や明日を築けない」時代に来ているのです。ここのような状態の中で何故、我々は宇宙開発に国費を投じなければならないのか?これを議論する必要がある。というのが、最初の立脚点です。

一方で我が国は、敗戦国でありながら世界4番目に人工衛星を打ち上げました。しかも、3番目までの戦勝国が同じく敗戦国ドイツの技術(V-2)を使って人工衛星を上げたのに対し、全く独自に新しいロケットを開発して打ち上げた、そのような先人が築いた歴史の継承者として、我々は生きています。現代文明が地球資源を急速に食いつぶし、大規模な環境破壊を引き起こしている現在、宇宙に視点を持ち地球全体を観察する能力を保持し、あるいは宇宙にその生活圏を広げること。このような「地球のSustainability」の維持は、我が国が世界に対して負っていかねばならない、先人より継承しなければならない、誇りでもあると思います。これが2番目の立脚点です。

・日本の宇宙開発の立脚点

投稿ナビゲーション


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です