連休前の12/22の読売新聞朝刊に、宇宙戦略室新設へと言う記事が出たが、同日午前の藤村官房長官が記者会見でこれを正式に発表
『宇宙政策の総合調整』や『準天頂システムの開発・運用』を担い、「宇宙審議官(仮称)を置くとして来年1月の通常国会へ関連法案を提出するとしている。
また日経の記事では「宇宙政策委員会(仮称)も新たにつくり、宇宙政策に関して関係閣僚に勧告できる仕組みにする」と書かれている。
いよいよここまで来たか、と言うのが正直な感想である。

有識者会議のメンバーであった昨年、またメンバーから離れた今年、2度に渡り宇宙分野の産官学の関係者100名以上を集めて開催した『タスクフォース会合』で、一番の同意事項は”強力で実行力を持った意志決定機関を作る”だった。
結局、何をどう議論しても各省庁で分断された政策では意味が無く、日本全体を見渡し統合的に政策が実施されることが一番重要、ということだ。
記事をさらっと読むと「宇宙戦略室」が意志決定機構だと思ってしまいそうだが、ここは官僚機構なので、政治側が総理直下で決めた意志(すなわち宇宙開発戦略本部会議での決議)を粛々と実行する機関と成る。
もちろん執行時に色々な判断も入って然るべきだが、戦略本部会議での決議とその精神に従って行政を実施する機関になるだろう。

ところで今回の記事では「宇宙審議官」を置くとなっているけれども、現在の宇宙開発戦略本部事務局では「局長」1名、「審議官」2名となっている。宇宙戦略室では「局長」を置かないということなのか、ここでいう「宇宙審議官」が実は局長級と言うことなのか、これはちょっと興味のあるところである。

一方、「宇宙戦略室」が執行機関とすれば、意志はどこで決まるかというと、前述の通り総理が議長を務める宇宙開発戦略本部会議で決定される。
しかしもちろん議長である総理も、また会議のメンバーである閣僚も宇宙に関する専門家ではないので、そこに意見を入れる人達が居る。これが「宇宙政策委員会」である。
橋本行革以前は「宇宙開発委員会」が総理直下に置かれていたため、今回新設される「宇宙政策委員会」と同様の役割を果たしていた。
しかし橋本行革委後、「宇宙開発委員会」が文科省の下に置かれてしまったため、「宇宙開発委員会」は文科省の宇宙開発にしか意見を言えなくなってしまった。
今回の動きはこれを橋本行革前に戻す、と言うことである。(「宇宙政策委員会」の設立と併せて、現在の「宇宙開発委員会」は廃止される事が専門調査会の意見である。)
上記の専門調査会の資料に詳しいが、「宇宙政策委員会」はこれまでと違い、「宇宙政策委員会には内閣総理大臣または各省の大臣に勧告することができる権能を与えるべきである。」とされている点は非常に重要である。
例えば今年、70億円申請していた「はやぶさ2」の予算が30億円しか付かなかった(25ページ目とか98ページ目とか)というのは、この「監督権限」がなかった事が大きな理由だと私は考えている。

今年はこの「監督権限」がなかったため、はやぶさ2の予算は同じく文科省から出ていた別の予算(具体的には地球観測衛星網の構築)との競合に終始してしまい、議論は『財務省 vs 文科省』で閉じているので戦略本部事務局も専門調査会も口出しが出来なかった。
(これが前から私が、『準天頂 vs はやぶさ2』だとか、『戦略本部事務局 / 専門調査会 vs 文科省』という図式が根本的に間違っていると主張している論点だ)
はやぶさ2に関しては、まずは科学的・文科省の業務内容的な意義や重要性を鑑みて、文科省内で勝ち残って一番になることが重要だ。
しかし仮に文科省内で負けたとしても(今回はそこで地球観測衛星網に負けたわけだが)、川口先生が言われるように「国家的重要性に鑑みて」復活する方法というのは、このような政府全体としての意志に基づき、予算の勧告が行える体制が整っていないと無理なのである。
例えば、中国はアフリカ諸国と「資源とバータ取引で衛星を提供」とかやるけど、これは現在の日本には無理な実施内容である。
日本では衛星を仕切っているのは文科省で、文科省的にはその設置法に照らし合わせて、「資源とバータ取引するために文科省予算を使って衛星を上げる」なんて事は出来ない。
今回のはやぶさ2もまさにこのパターンで、科学的・文科省の業務内容的重要性として2番になってしまったものを、ある意味文科省の業務を越えた(すなわち設置法という法律を越えた)判断基準を持ち出して順位を逆転させると言う「違法行為」は出来ない、と言うことだ。

そういう意味で、毎日新聞が”予算権限などを一元化できるかが課題”と書いているのがまさにその通りで、11/30に実施された専門調査会の議事録の8ページ目でも、上杉先生が以下のように述べられている。
『実質的に司令塔機能が発揮できるようにして頂きたい。本来、常勤の方にやって頂くのがよいと思う。その辺は法律的にどうか分からないが、そう希望する。ただ、「勧告」といった強い権限を持つということで、実質的に機能するということであればよいとも思う。』
この部分に関しては、この日の会議ではこの一言しか「勧告」件に関して出てこないが、その前の10/31の専門調査会の議事録を読むと、もう少し詳しく議論が行われていることがわかる。
2ページ目の部分にまとめがあるが、関連する部分を見ると

  • 司令塔として十分に力を発揮するように勧告権を持つような組立てにした方がいい。
  • 勧告権は入れるべき。また、予算資源配分について、財務省との連携でやり、増やしていくという発想できちんとやると、各省からも、ここは頼りになるとなる。
  • とされている。
    この特に2番目の御発言は、今後の省庁横断型の宇宙開発を進めるための大きな指針と成る御発言だと僕は思う。

    平成20年の自公民議員共同提案による「宇宙基本法」の制定以来、我々は3年にもわたる長き時間を費やして、ようやく「政府としての意志決定を協力に実行する」体制が整いつつある。
    この体制は同時に、上杉先生が言われるように「連携して宇宙関連予算を増やしていく」ための体制でもある。
    もちろん、それは宇宙分野の独り善がりに陥るのではなく、日本全体の事を考え、明日の日本を支える重要な基幹技術として「宇宙開発」を執り行う、というのが大前提と成るのだけれども。
    3年に及ぶ体制論の議論の中で、各省庁の矜恃を賭けた論争もあったと思う。しかしその議論はいよいよ終着点を迎えようとしています。
    ここから、我々が進むべき新しい飛躍が始まります。
    そしてその飛躍は、その想いをそれぞれが胸に持ち、手を取り合って進んでいかなければ決して手に入れることが出来ません。

    年明け1/15に予定されている宇宙政策ゼミでも必要となるので近日公開を予定している資料(まだアップされていません。こちらは現時点での素案ですが、ここから大きく変えるのであくまでも参考としてください)にも内容を掲載を予定しているが、現在、僕は文科省の補助事業としてUNIFORMプロジェクトのディレクターを務めている。
    このプロジェクトは上記の参考資料の素案の右側真ん中よりちょっと上の部分、『国際宇宙インフラ・データ利用市場』の「宇宙新興国の衛星打上やデータ取得・利用に協力し、規格の共通化を計る。衛星本体の販売よりもデータ利用のスキームによる産業化を目指す。」と言う部分の実効的なプロジェクトだと、私の中では位置づけている。
    現在、経済的に発展を続けるそれぞれの地域の中核国でもある宇宙新興国では、独自の宇宙開発技術を有したいという強い希望を持っている。
    そういった国々とまず、小型衛星やデータ利用と行った入りやすい分野で協力を進め、そこから新しい共通規格や市場を形成し、さらにはこれらの国々と作るクラスターで既存の衛星市場にまで食い込めるようなwin-winな世界を目指すこと。
    これがUNIFORMプロジェクトが目指す、ビックピクチャーである。
    このような新しい世界構築には、いわゆる文科省的な教育を通じたキャパシティービルディングが非常に重要な役割を果たす。
    また経産省や産業界とも密接に協力し、海外に日本の宇宙システムをパッケージとして販売する戦略構築も、欠かせない要素である。
    このような「パッケージ輸出」は、文科も経産も他省庁も、全て協力が出来る内容だと僕は思う。

    上杉先生の御発言にあるような新しい宇宙開発の世界を、僕自身も実際に手を動かす側として、作っていきたいと思う。
    宇宙政策委員会、および宇宙戦略室を中核とした、日本の新しい宇宙開発と、宇宙開発に留まらない新しい日本の未来を、みんなで作っていこうじゃありませんか。
    頑張りましょう!

    ・宇宙戦略室と宇宙政策委員会

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