確かに、確かに。新聞記事を書くときに、文字数が限られているわけで、そうなると「キャッチーで」「一言で分かり易い」文章が求められるというのはわかる。しかし、である。ジャーナリズムってそれで良いのか?と思ったりする。記事の都合で、きちんと説明しないのは、それは良いの?
昨日の有識者会議を終えて、「宇宙庁」だとか「月探査」だとか「有人」とか言葉が紙面を踊るんだけど、有識者会議の提言のポイントは其所じゃないだろう、と思ったのでコメントを。

まず一番最初にすべき政治決断はこれ。

「宇宙進出能力」を我が国が戦略的に維持すべき技術と認定するか否か?

世界でロケットを打てる国・地域は12カ国しかないし、我が国は世界4番目の人工衛星なわけだ。輸送能力・人工衛星製造・運用能力を持ちたいと思っている国は多いわけで、今更我が国がその能力を捨てるのはどうなのよ?、というのは広く指示されると思う。なので、ここは「維持すべき」が提言内容だ。

ところで「技術が維持される」ためには、知識(すなわち人材)と製造ラインが維持される必要がある。すなわち、一定規模の製造需要が必要になる。そのやり方としては、以下の2つがあり得る。
・官需丸抱え方式:アメリカ・ロシア・中国はこれだ。宇宙の軍事利用などもあるので、それだけで宇宙産業を維持できるだけの需要は作り出せる。
・民需掘り起こし方式:EUなんかがこれだ。例えば、アリアンスペース社は経常利益はほとんどゼロだが、売上高はそこそこある。すなわち、域内に十分な需要と雇用を産み出している。それで宇宙産業は維持され、技術も維持されている。

日本はどうなのかといえば、これまでは官需丸抱えでやって来た。ところが、である。日本の宇宙関連産業の就業人口は、1995年以降減少を続けている。また宇宙機器産業は、この8年間で54社も撤退している。すなわち、『現在投下されている官需では日本の宇宙産業は維持できない』レベルになっている、ということだ。宇宙関連予算は大体3000億円ぐらいな訳だが、それじゃ足りない、ということだろう。いくらなら足りるのかは難しい問題だが、一声5000億円だろう。宇宙基本計画が年5000億円を謳っていたのは、まぁその辺もあるのだと思う。
しかし、宇宙技術を維持するために、毎年必ず5000億円ずつ出費しなければならないとなると、それを国民は良しとするのだろうか?ここは政治判断だが、少なくとも僕はそれは無いと思う。方法としては民需を喚起する方法を取り、出来れば民間投資だけできちんと宇宙技術が守られ、そして出来れば加えて発展していき、日本の重要なアイテム・外交手段・商売道具となるような方法を模索すべきだと思う。すなわちここの答えは「民需の掘り起こし」になる。

しかし、民需を掘り起こすと決めたからと言って、すぐに掘り起こせるわけではない。例えば静止軌道には現在、260機が運用されている。しかしこのなかで日本の企業が主契約社となったのは、わずか2機である。全然売れてないのだ。売るためにはそれなりの工夫がいる。
まずは「世界に優位性を持つ、中核となる技術の活用 / 新規開発」が重要だ。例えば、既に日本が世界に対して優位な技術としては、LバンドSARや降雨レーダ、トランスポンダー、太陽電池パネル、スラスタなどがある。これらを中核技術に据えて、売れる戦略を立てるべきだ。また今後も、「宇宙戦略部品」が何かを考えて、その開発を進めていくことが重要だ。
次ぎにこれらの中核技術を中心にしながら、「戦略的に販売する」方法を考えないといけない。衛星の世界では何よりも実績がものをいう。なので、省庁等が最初の利用者となり、国内で様々な衛星・データの利用実績を構築する。それを背景に、海外に売りに行くといった工夫が必要だ。また技術を切り売りするだけだと、すぐに売れる物が無くなってしまう。例えば長期にわたりパテント料を取るなど、そういった工夫も必要だ。デファクト・デジュールスタンダードを取ってくることも必要だろう。こういったものを「パッケージ」として考えるような戦略も重要だ。
残念ながらこういった「儲けるためのロジック」を考えられる部署は今の日本のお役所や独立行政法人にはない。だから作らなきゃならない。前回開いたタスクフォース会合は、その一つのヒントになるだろう。十分な情報収集と分析。そして企画立案。全省庁を巻き込んだ、利用実績作り。そういったことを出来るのは、それはもう個別省庁ではない。だからこそ内閣府の下に置く『宇宙庁』のような機関なのだ。あるいは「日本宇宙開発株式会社」といったような国策会社でも良いかも知れない。これだと「収益」を上げた部分を、「赤字になるが公共的な観点・イノベーションの観点から推進すべき」分野への投資に廻すことも簡単にできる。宇宙庁にしろ日本宇宙開発株式会社にしろ、何をやって何をやらないかを決めるのは、経済の原則だ。国費の投入はもちろん必要になってくるだろうけど、経常利益がぎりぎりゼロでもいいけど、きちんと売上げを出して「宇宙進出能力」を維持するための産業規模を保つこと。これが一番の原則だ。

我が国の宇宙開発が、今、一番最初にやるべき事は「収益性の確保」である。それをやらないと、本体が倒れてしまう。まずは基幹部分として「宇宙に行ける能力」を守る。そのための産業維持であり、需要創出である。まずはそれが一番大事だ。
次ぎに、赤字だが「公共的な観点・イノベーションの観点から推進すべき」ものはなにか?と考えるべきなのだろう。そうすると、一体どれがそれに当たるのか、またそれにはどのぐらい投資すべきなのかが見えてくるはずだ。そのあたりを勘案した物を、4/20には提言書としてまとめることになるだろうと、今のところ思っている。

こう考えると、話しは実に単純ですよね?

・有識者会議の提言ポイント

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One thought on “・有識者会議の提言ポイント

  1. 本当に、単純な話ですね。もっとも複雑な事象から単純な原則を導き出すのは、とても難しいわけですが。

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