先にも書いた日本の月探査計画に関して、書きたいと思う、

月探査懇談会の結果を受けて、パブリックコメントおよび計画の愛称募集に関する通知が出ている。
私の意見だが、この計画はダメダメだ。何故か?理由を以下に書く。

まず先のリンク先の冒頭にも書かれているが、「宇宙基本計画(平成21年6月2日宇宙開発戦略本部決定)においては、有人を視野に入れた月探査について、1年程度をかけて検討を行うこととされております。」が議論のスタートだ。そもそも論であるが、「有人を視野に入れた月探査」の「検討」というのは、「有人を視野に入れた月探査」をやる・やらないの検討が行われたわけではない。これは先日の記事にも書いたとおりだ。はじめから「有人を視野に入れた月探査」をやることが前提で話が進んでいる。これがお役所文章マジックである。もちろん、最初に宇宙基本計画が書かれるときに、「有人を視野に入れた月探査」をやるべきかやらざるべきかが充分に議論されて結論が出ていたのであればよい。その段階では、そんな結論は全然出ていないのだ。基本計画が出てきて、「なんで月をやることになっているのか?」と疑問が呈されても、「それはこれから1年かけて議論するんです」と言われてしまう。で、蓋を開けたら「そもそも月探査懇談会は月探査をやるとしたらどういう探査が良いかを議論する場で、月と比べて他がどうかを検討する場ではない」となる。そしてまとまってくるのがこの結果だ。
これも先日書いたことだが、この結果に誰も責任を負わない。ただ、あるのは、「先にこういう文章があるから・・・」。ただそれだけだ。それだけで、これだけの計画が既定路線として動き始めている。そこが最初のダメダメだ。

次ぎに、そもそも何故、日本は月探査をやるのか?が全然ダメダメ出る。今回の提案では、以下のように記述されている。

<月探査の目的>
太陽系の成り立ちなどを解明するためには、様々な天体の探査を行うことが重要である。その中でも、地球に最も近い重力天体である月において、
① 太陽系探査のための宇宙技術を自ら確立
② 世界トップレベルの月の科学を一層発展
③ 国際的プレゼンスの確立
という3つの目的から、月探査を戦略的に進めることが重要である。

そのあと、①に関して、

我が国は「はやぶさ」による世界初の小惑星からのサンプルリターン技術の確立などを着実に進めているが、今後本格化する太陽系探査の対象となる重力の比較的大きな天体(重力天体)への着陸探査・帰還に係る技術はまだ有しておらず、我が国が太陽系探査を自ら推進するとともに、世界に貢献していくためには、我が国自らの技術として、重力天体への往還技術などを今後確立していく必要がある。

と記述されている。
すなわち、「日本は『世界初』のサンプルリターン技術を獲得したが、その特技に『選択と集中』することなく、既に他国もやっている技術だけど新しく重力天体への往還技術にまで手を広げちゃいますね」と言っているわけだ。既に手にしている世界初の技術をさらに高めて、さらなる優位性を確保するのではなく、後追いでしかも需要があるかないかぜんぜんまだわかんない技術を追い求めますね、といってるわけだ。お金があるならそれでも良いだろうが、これが経営戦略として正しいかどうか、疑問の余地もないだろう。

また次ぎに、以下の記述がある。

月は地球に最も近い重力天体であることから、重力天体への軟着陸技術、重力天体からの帰還技術、

ここまでは良い。仮に「重力天体への軟着陸・帰還技術を磨く」とすれば、それは月でやるのは良いだろう。ただし、そもそも重力天体への軟着陸・帰還技術が必要なのか?は議論されていないことに留意して欲しい。そして文章は以下に続く

高い信頼性を有する惑星探査ロボット技術とともに、日本が得意とする民生技術をいかした燃料補給の不要な再生型燃料電池技術や軽量・高効率な太陽電池技術など、今後の太陽系探査に必要となる新たな宇宙技術を確立する場として最適であり、将来の自在な太陽系探査への重要なステップとして、これらの技術の確立を目指すことが必要である。

ここでちょっと待てよ、である。高い信頼性を有する「惑星探査ロボット技術」というのは、まさに現在、はやぶさが実践していることでもある(もちろんかぐやも実践した)。すなわち、この部分は全然月じゃなくて良い話しなのだ。その次の「燃料補給の不要な再生型燃料電池技術、軽量・高効率奈太陽電池技術」もまたしかり。となると、「将来の自在な太陽系探査への重要なステップ」として、「重力天体への着陸技術・帰還技術」が必要かどうかだけが、「月」をやるべき根拠になる。ちなみに重力天体への着陸技術と言っても、月は大気がない天体である。金星・火星はまたちょっと違った側面を持つ。また今後、金星・火星、それ以遠の惑星間空間の利用と、地球周回の無重力空間の利用とどっちが盛んになるかを考えてのこの結論なんだろうか?例えば、月や金星・火星に人が100人行く時代に、今の地球周回軌道上には一体何人の人間が居るのが現実的な未来だと想像しているのだろうか?おそらく、そんな時代には地球周回には1万人規模の人間が居るはずだ。そしてその資源は、月や金星、火星などの重力天体から持ってくるよりも、地球近傍小天体等から持ってくる方がよっぽど経済的である。すなわち、重力天体への着陸技術・帰還技術なんかよりも、微少重力天体への着陸・帰還技術の方がはるかに近い将来に必要となる技術といえる。しかも、その分野で『日本は世界最先端に、現在既にある』のだ。にもかかわらずそれを捨てて、「重力天体への着陸技術・帰還技術」を優先するのか?

先日も述べたとおり、かぐやの働きにより、現時点で我が国は「世界でもっとも質の高い」月の情報を手にしている。②に関しては以下のような記述が為されている。

中国、インドなど複数の国が月を目指す中、探査活動が停滞すれば、月の科学での日本の優位性を維持発展することは困難となる。

この記述は正しい。しかし、である。それでは今回、提案されているようなミッションが実施されたとして、それは日本の優位性を維持発展できるのか?に関して考える必要がある。何度も言うように、中国・インドは月面有人基地の設置を具体的に考えている。そのために必要となる「一連の技術」、すなわち『人』を「宇宙に送り出し」、「滞在させ」、「無事に帰還させる」技術を、粛々と開発している。しかるに我が国は、『人』を「滞在させ」る技術はあるが、「宇宙に送り出す」「無事に帰還させる」事に関しては計画すら無い。すなわち、中国・インドが月面に有人基地を作る中、こちらはロボットで基地を作るのだ。それが日本の優位性を維持発展させる投資なのか?

③に関しては以下のような記述がある。

我が国が月面でのロボットによる探査活動の有機的な国際協力を提案するなどにより、世界全体で研究成果を高める国際コーディネータ役を目指していくことが重要である。

もう一度考えて欲しい。月に、中国人とインド人が居る。日本のロボットが居る。その状態で、「世界全体で研究成果を高める国際コーディネーター」は日本が務めるべき、と一体どれだけの人が思うのだろうか?当然、イニシャチブは中国・インドが握ると思わないのか?

月探査は重要である。しかし、それは(他のミッションを押しのけて)これから2000億円かけてやるミッションではない。他のミッションと充分に比較した上で、やるなら月着陸・周辺のローバ探査(400億円)、そして次の段階として月からのサンプルリターン探査(500億円)だろう。しかし財政の逼迫状況に鑑み、他のミッションとを考えると、今後15年以内で実施可能なのは前者のみではないか?と僕は思う。

先日の記述に関してもあまりリアクションが無くてとても残念だ。我が国の宇宙開発を何処に持って行きたいのか?そのことを各自がそれぞれ自分の問題として捉え、財政状況や他国の状況も考えながら、現実的な解を模索するという行為が、必要不可欠だと僕は思う。我が国の宇宙開発の行方を決めるのは、我々自身なのだから。

是非とも、積極的な議論を期待したい。

・日本の宇宙開発を何処に持って行きたいのか?何事にも、その仕事をした人が居る。そしてその仕事を批判されると言うことは、その仕事をした人にとっては腹立たしいことだ。そう考えると、仕事に対する批判というのはなかなかしづらい物だ。また特に、その仕事をした人の顔がわかっている場合だとか、まして知人であった場合だとか、そうなるとますます批判しづらい。しかし、である。やはりどうしても批判せざるを得ない。日本の宇宙開発の今後を考えたとき、どうしてもそれがプラスだと思えないからである。もし私の発言に言葉足らずな点があったり、気分を害されるようなことがあれば申し訳ない。


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