というわけで、有識者会議とは多少離れますが宇宙教育に関して。ちょうど林さんからもコメントを戴いたので御説明させていただきます。林さんが書かれていることは、まさに我が意を得たり、といった感じです。和歌山大学は現在、UNISECと協力しながら、その方向で話しをどんどん進めています。
宇宙教育というのは、的川先生が言われているようないわゆる「生命の大切さ」を教える教育というのもありますが、我々が目指しているのはもうちょっと大人向けの宇宙教育です。具体的に言うと以下のような人材育成を考えています。

「タスク量の決まった定常業務をこなす個人教育」というのが、従来日本が推し進めてきた教育です。これはこれで重要なのです。特に経済が右肩上がりで進んでおり、昨日の延長線上に今日があり、明日が築かれるとき、このような人材は非常に重要です。しかし一方、現在のように経済が低迷し、国全体がどっちに向かって走ればいいのか、誰もわかっていない時にはとても困った問題を生み出します。一つは「スプーンフィーディング」と我々が呼んでいる問題です。すなわち、「日本の学生は口元に餌を持って行けば食い付くが、自分から餌探しをしない」という問題です。例えば文化祭の後片付けの時。「あそこの椅子片付けてー」というと、彼等はすぐにやってくれます。しかしそのあとぼーっとしてる。で、次の指示が有るまで動かない。指揮官が居て全部指図するには良い人材ですが、臨機応変とか即応性が求められるときには困ってしまう。
あと困るのが「仕事は自分に振られた仕事だけをやればよい」と思っている学生が多いこと。例えば、仕事量の見積をしてみる(そもそもこの見積からホントは主体的に参加すべきなんですが参加しない。仕事は振られるものだと思っている。なぜならそれは「自分の仕事」じゃないから)と100だったとしましょう。これを5人でやるとしたら、一人20はやらないとダメですよね?でも彼等の判断基準はそんな感じではなく、「僕、バイトがあるから15しか出来ません」×5人とかになっちゃいます。としたら残りの25は誰がやるの?「他の人がやってくれます」だから、そんな人は居ないんだってば。僕はこういうのを「靴屋の小人症候群」と呼んでます(笑)
また、仕事量というのは往々にして見積を超過します。100だとおもったものが120に。おまけに「15出来るとおもってたけど10しか出来ませんでしたー。スミマセン!(終了)」で全然悪びれません。だって自分達は「雇われ」で、全体としての仕事が出来ようと出来まいと、関係ないからです。また仮に反省してたとしても、「僕ってダメな奴なんです・・・・」とか、自分自身の話にしか向かない。その出来なかったことをどうやってカバーするかとか、そんなことには全然向かない。
で、結局残った仕事はどうなるかと言えば、「全体を見るのはプロマネの仕事なんだからプロマネがやって当然」みたいなことになってしまうと、当然だれもプロマネなんてやりたがらない。そんなの、ホントはプロマネの仕事じゃないのにね。

そこで我々が新たに導入するのが、「非定量なプロジェクト業務をこなすチーム教育」です。これをいろんなプロジェクト(缶サットやロケット、バルーンサット等)をチームで実施させることにより、

  • プロジェクト体験
  • プロジェクト管理 ←世間で言うPM講習はこれがほとんど
  • プロジェクト運営/マネージメント
  • を実践的に学んで貰います。

    また同時に、チームをどうやって形成していくか?を学びます。
    ここは話しが各論になっちゃいますが、

  • 成立期
    チーム形成の初期段階。メンバーが集まり、自己紹介が終わり、プロジェクトの目的が説明された状態。メンバー間の行動はよそよそしく、人が話したことについて批判したりはしない。
  • 動乱期
    メンバー各自が自分の立場を作ろうと縄張り争いを行い、対立が発生する段階
  • 安定期
    メンバー各自が自分の立場を確保し、他のメンバーの考え方にある程度理解できるようになった状態。ようやく共同でプロジェクトを進めようという意識が出てくる。
  • 遂行期
    メンバーが互いに尊重し合い、プロジェクトの各種問題について全員が共通の問題意識を持ち、前向きに対処する状態。生産性が高い段階。
  • このようなチームの成立に「必要不可欠」な段階を、どのような手法で作り出していくのか?を学びます。そしてマネージャー教育としては、チームの雰囲気(climate)を読み取り、どのようなManagerial Stylesでマネジメントに挑むべきか?これを学びます。
    こういった新しい教育の推進により、「任せれる」人材の育成が出来ると我々は考えています。

    またもう一つ重要なのは、「昨日の延長線上にない今日・明日」を構築できる、パラダイムシフト出来る人材育成です。これは最近、よく「おじいさんのランプ」の話しを引き合いに出して説明します。ランプ屋だったおじいさんが、電気を引く事に決めちゃった区長さんの家に火を付けて仕返しをしようと出てきて、マッチを忘れたことに気がつきます。仕方ないので火打ち石を使って火を付けようとすると、かちかち音ばっかりうるさくて火が付かない。

    『「マッチを持って来りゃよかった。こげな火打みてえな古くせえもなア、いざというとき間にあわねえだなア」
     そういってしまって巳之助は、ふと自分の言葉をききとがめた。
    「古くせえもなア、いざというとき間にあわねえ、……古くせえもなア間にあわねえ……」』と気がつくのです。

    そして彼は愛していたランプを川原に持って行き全部に灯りを灯す。ここから先、長いのですがちょっと引用させて貰うと、

    『ランプ、ランプ、なつかしいランプ。
     やがて巳之助はかがんで、足もとから石ころを一つ拾った。そして、いちばん大きくともっているランプに狙(ねら)いをさだめて、力いっぱい投げた。パリーンと音がして、大きい火がひとつ消えた。
    「お前たちの時世(じせい)はすぎた。世の中は進んだ」
    と巳之助はいった。そしてまた一つ石ころを拾った。二番目に大きかったランプが、パリーンと鳴って消えた。
    「世の中は進んだ。電気の時世になった」
     三番目のランプを割ったとき、巳之助はなぜか涙がうかんで来て、もうランプに狙(ねら)いを定めることができなかった。
     こうして巳之助は今までのしょうばいをやめた。それから町に出て、新しいしょうばいをはじめた。本屋になったのである。

    こういったパラダイムシフトが出来る人材、自分の責任で、きちんと変えていける人材、それを育てたい。そのための教育(授業)を開発するため、そして新しいパラダイムを打ち出すための政策議論等まで実施する為に、宇宙教育ラボ(仮称)をこの4月から立ち上げます。またUNISECでは新しいジャーナルとシンポジウムを立ち上げ、超小型衛星と宇宙教育に関して、アカデミックに議論できる場所をつくります。

    またこの和歌山大の新しいラボは大学内だけに公開されているわけではなく、広く国内の大学・高校生にも公開します。また国外からも人材を受け入れ、今後、日本とその国を結ぶ重要な人脈として、イコールパートナーとして、関係を築いていくことを目指しています。このあたり、具体的にまとめたのがこちらの図です。(ただしこっちの図はまだ調整中なので、春に修正があるかも知れません)

    もちろん、これらはすべて和歌山大だけで出来ることではありません。このあたりはUNISECおよびその参加校とも協力し、連携して日本全体でそのような教育が出来る体制を作ろうと思っています。(資料「宇宙教育拠点ネットワーク構想」)

    これらがボトムアップとして、現在、我々が進めている宇宙教育です。

    ・宇宙教育について

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